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“ちょん”と触れるだけで物の形が正確に測れる! 三次元座標測定機 ~私の“推し“マシーン~

こんにちは、都産技研の広報担当です。今回は面白い装置があると聞いて、「幾何形状測定室」まで来たのですが……。

この装置です。なにやら真ん中あたりで機械が動いていますよ。
上から細長い棒がゆっくり降りてきて……
……「ちょん」と触って、また上にあがっていきます。[ゲージ提供:(株)トレサ]
そしてまた「ちょん」を繰り返します。えっ、なんですかこれは……?

人が寝そべることができるほどの大きな台の上で、置かれた物を先っちょにボールが付いた棒で「ちょん」とする装置。

いただいた資料によると、これは「三次元座標測定機」というものなのだそう。いったい何のための装置なのでしょうか。実証試験技術グループ副主任研究員の三浦由佳さんにお話を伺いました。

実証試験技術グループ 副主任研究員 三浦 由佳さん


物体の形状を1000分の1ミリメートル 単位で測定

さっそくなんですが、この三次元座標測定機で何がわかるんでしょうか?

三浦「これは物体の長さを測っているところです。三次元座標測定機は、空間上の座標を検出して、測定対象物の位置や形状を正確に測れる装置なんですね」

装置の横にあるPCで初期設定を済ませれば、計測が自動で行われます。

先ほど上から降りてきた棒は「スタイラス(測定子)」と呼ばれるもの。

スタイラスが測定したい物体の表面に「ちょん」と当たると、当たった場所の三次元の位置(X軸・Y軸・Z軸)が正確にわかるのだといいます。

つまり、物体の上を2箇所「ちょん」とすれば、「ちょんA」の地点と「ちょんB」の地点の位置が正確に測れるので、計算すれば「ちょんAB」の長さがわかる……ということで合ってますか?

三浦「そうですそうです。長さは1000分の1ミリメートル単位で測れるんですよ」

測定結果の画面。小数点以下6桁まで表示がありますね。

なるほど。すごい細かい単位までわかるんですね……! あの「ちょん」の棒を見る目が変わってきました。

三浦「よかったです(笑)。ちなみにこのスタイラス、一番高いもので20万円以上します」

「ちょん」ってする棒が20万円以上……! 思わず背筋が伸びる広報担当たち

上の写真にある通り、スケールとスタイラスは長さも太さも大きさもさまざま。測定する内容や物体によって使い分けます。さらに、同時に5方向まで設置可能なんです。

上からだけではなく、横からも「ちょん」とすることで、複雑な部品の形状も正確に測れるそう。円や球でも大丈夫。球なんて、長さを測るの難しいですもんね。

測るものによって「ちょん」の数が増えます。平面を測るには最低3ヵ所の「ちょん」が必要。

三浦「長さだけでなく、角度や真円度、直角度なども測定結果から求めることができますよ。この装置を使えば、設計図面に書かれた寸法通りに製品がつくられているか、検証することもできるわけです」


部屋の気温が20℃に保たれている理由とは?

ところで……この部屋、ちょっと寒くないですか……?

取材日は残暑がまだまだ厳しい9月中旬。外はポロシャツ1枚でも汗ダラダラ。この部屋に入ったときはヒンヤリして快適だったんですが、ずっといたら肌寒くなってきました……。

三浦「あぁ、その格好だと寒いですよね。この部屋は一年を通して20℃プラスマイナス0.5℃に保っているんです。だから夏は涼しく、冬は暖かい(笑)」

いま気づきましたけど皆さん長袖じゃないですか。

そういうことだったんですね。しかし、どうして20℃なんですか? 皆さんかなりの暑がりとか……?

三浦「いえいえ。熱によって測定対象物が伸び縮みしないように、室温を一定に保っているんです。私たちの仕事は『測定機器の校正』。精密測定が不可欠なんです」

そういえば部屋の扉の上にはこんなキャッチフレーズが。

世の中にあるさまざまな測定機器は、「私、本当に正しい値を示してるんですよ」と証明するために、より正確な測定機器による「校正」が必要になるもの。

都産技研では、一般的な校正よりも厳格かつ全世界に通用するJCSS(Japan Calibration Service System)校正に対応。依頼があった測定機器を校正し、校正証明書を発行しているのだそう。

つまり、三浦さんを含め、ここにいる皆さんは「測るプロ」なんです。

三浦「都産技研では『温度』『電気』『長さ』3つの区分でJCSS認定校正を行っています。私は『長さ』の担当です。都産技研は日本で唯一、三次元座標測定機を用いたJCSS校正ができる校正機関。今、測定しているのも、座標測定機用のゲージです」

長さを測るためのゲージが、どれくらい正しく測定できているか測っているんですね
[ゲージ提供:(株)トレサ]

近年は品質への意識の高まりから、自動車や航空機、医療機器などでJCSS校正の問い合わせが増えているそう。

世界に通用する製品をつくるには、世界に通用する校正をしないと……ということ。すごいプレッシャーじゃないですか。大変だ……! 皆さんどうやってJCSS校正のお仕事に向き合われているのか、もう少し教えていただけますか……?


【お知らせ】
次回、「温度」「電気」「長さ」のJCSS校正について、チームメンバーの皆さんに詳しくお聞きします。「キャッチフレーズ」をつけた理由とは? 測定が大変すぎて腱鞘炎になったって本当?

お楽しみに!


実証試験技術グループをもっと知りたい方へ

今回ご紹介した三次元座標測定機や、JCSSは都産技研の広報メディア『TIRI NEWS』で詳しくご紹介しています。

実証試験技術グループは、4つの担当分野(環境試験、電気・温度試験、製品・材料強度試験、長さ・形状測定)から構成され、信頼性評価、故障解析、動作解析や環境試験などにより、高品質・高性能な製品開発を支援(試験、研究)しています。

お問い合わせ:実証試験技術グループ
実証試験技術グループ - 都産技研ホームページ (iri-tokyo.jp)