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最大300トンのパワー!都産技研の力持ち「万能試験機」に迫る~私の“推しマシーン”~

都産技研が保有する機器には、高価なものや日本でここにしかないものも。そんなレアな機器の魅力をお伝えするコーナーが「私の“推しマシーン”」です。
 
記念すべき第1回は、実証試験グループの「万能試験機」です。いったいどんな機器で、何が万能なのか? 都産技研マスコットキャラクターの「チリン(R)」と一緒に、さっそく実験室を訪ねました。
 
 
20トンの力で金属製のボルトを引っ張ると……?
場所は都産技研1階にある「製品強度実験室」。実証試験技術グループの小船諭史さんに、さっそく万能試験機を見せてもらいました。

チリン(R)「実証試験技術グループの小船諭史さんです!」

小船「私の後ろにあるのが万能試験機です。引張試験や曲げ試験など、製品の強度を評価するために使う機械ですね」

中央にそびえ立つ万能試験機。大きさが伝わるでしょうか。

小船「この部屋には、小型から大型まで6台の万能試験機があり、これはそのなかでもナンバー2のもの。最大50トンの力を加えることができます」
 
最大50トン……なんだか漫画やアニメで目にするような数字で、想像ができません。「なんだか強そう」ということだけはわかります。
 
「さっそくやってみましょうか」と小船さんが取り出したのは、直径16mmくらいの鉄製のボルト(M16という呼び径です)。万能試験機に手際よくセットしていきます。

ちょっと太めのボルト。金属製で見た目よりずっしりと重いです。
これを万能試験機にセット。中央で機械に挟まれている黒い棒が、ボルトの芯の部分。

小船「これからこのボルトが壊れるまで徐々に引っ張って、どのくらい耐荷重があるか調べます。1分後ぐらいにすごい音が鳴るので、気をつけてください」
 
小船さんがそう言うと、万能試験機がブーン……と鈍い音を発しました。注意深く見ると、少しずつボルトが伸びる様子がわかります……。

引っ張り試験中、徐々に力が加えられていく……
しっかり耳をふさぐ小船さん。

ドキドキしながら待つこと約1分、その瞬間は唐突にやってきました。

(音量にご注意ください!)

ボルトがちぎれている……!
引きちぎられたボルト。まるで発泡スチロールのよう。

「バーン!」という破裂音とともに、ボルトがちぎれてしまいました。ものすごいパワーです。
 
小船「このボルトは約20トンの力が加わると破断することがわかりました」
 
これが20トンの力……!
  
引張・曲げ・圧縮……強度試験に対応した万能試験機
そもそもここ、「製品強度実験室」はどんなことをしている部屋なのでしょうか?
 
小船「その名の通り、製品の強度を測る部屋です。中小企業の方々を支援する目的で、試験機器の貸出や、試験の受託を請け負っています」
 
製品開発において、「この製品はどれくらいの強度に耐えられるのか?」といった確認は欠かせません。そこで必要となるのが「強度試験」です。
 
小船「強度試験には、引張、圧縮、曲げ、ねじりといったものがあります。これらは一回に大きな力を加える試験ですが、小さな力を繰り返しかけることで強度を見る試験もあります。同じ動作を1万回~1000万回繰り返したりするんです」

「この部屋の機器で、さまざまな強度試験には対応できますね」

先ほど見せてもらった万能試験機は、引張・圧縮・曲げといった、上下の動きの強度試験に対応したもの。
 
部屋の奥には、最大300トン(!)もの力をかけられる巨大な万能試験機もありました。

最大300トンの万能試験機。巨大ロボのよう。

小船「これらはかなり大きなタイプですが、日用品を評価するための小さなタイプの万能試験機もあります。シャンプーのポンプとかに、こんなに大きな試験機で評価するわけにはいかないので(笑)」
 
強度試験を依頼する企業は「約4割が建築関連」だといいます。建築図面に書かれた規格を満たしているかどうか、建築部材の強度を調べることも多いそう。
 
小船「都産技研では、機器利用と依頼試験で、年間のべ約20万件以上ご利用いただいています。中でも強度試験は、製造業だけでなく、医療や商社などさまざまな企業の方に必要とされていますね」

「曲げ」の強度試験も見せていただくことに。先ほどの万能試験機のアタッチメントを付け替えました。
真ん中に横たわる銀色の円筒が試験体。左右を支え、真ん中を押す「三点曲げ」で曲げていきます。
完全に曲がっております。
もちろん人の力では戻りません……! 固い……!

どんな形状の製品でも強度試験ができるように
製品強度実験室に配属されてから、10年目となる小船さん。この仕事の魅力を聞いてみると「お客さまそれぞれに課題が異なること」だと話します。
 
小船「強度試験に持ち込まれる製品は千差万別。形状も違いますし、抱えている課題も違います。お悩みの内容はお客さまの数ほど異なると言っていいですね。そこにいかに対応するかが、私たちの腕の見せどころです」
 
先ほどの引張試験と曲げ試験でアタッチメントが変わったように、試験対象の製品が変われば、万能試験機への固定方法も変えなくてはなりません。

どんな製品にも対応できるよう、アタッチメントや計測機器がたくさん用意されています。

製品を固定するためのアタッチメント(治具)を用意したり、どういう評価方法がベストかを検討したり……と、準備には時間がかかるそう。中には半年近く打合せを繰り返して、ようやく試験に至ったものもあるのだとか。
 
小船「お客さまからの依頼には、できる限り対応したいんです。どんな製品でも試験ができるように知恵を絞らねばならないのが、大変でもあり、面白いところですね」

こちらは「ねじり試験機」。産業機器のシャフト(軸)など、棒状のものにねじりを加えて評価する試験機器です。
一般構造用炭素鋼(建築などに使われる鋼)でできた六角形の棒を使って実験してみます。
六角形の棒をセットし、実際に360度ねじってみると……。
こうなりました。曲線が美しいですね……。

最後に単純な疑問なのですが……。すごい力で金属を引っ張ったり、曲げたりするのって、ちょっと怖くないですか……?
 
小船「怖いです(笑)。初めて試験機にかけるものばかりですから、いつ壊れるのかドキドキしますよ。こればかりは10年経っても慣れませんね(笑)」

ご協力ありがとうございました!

※ noteの記事では、一般の方にも伝わりやすい「t(トン)」を単位にしていますが、計量法では力の単位は『N(ニュートン)』が使われており、重さの単位を表す際に、正式にはこの計量法に基づいた表記が義務付けられています。
1トンはおおよそ9.80665kN(キロニュートン)です。