地下に広がる巨大空間に潜入!「都産技研本部バックヤードツアー」後編
普段は職員も入れない都産技研の裏側に潜入する「都産技研バックヤードツアー」。前編では屋上緑化を眺め、外壁に設置された巨大ロゴを恐る恐る見に行きました。
今回の後編では、いよいよ地下空間に潜入します!
都産技研の中にある「ISS」とは?
5階のキャットウォークから屋内に戻ると、鈴木さんから「ISSを見に行きますか?」と言われました。ISS……? 国際宇宙ステーションですか?
このISSとは、もちろん国際宇宙ステーション(International Space Station)ではなく、フロアとフロアの間にある設備専用の中間階(Interstitial Space System)のこと。扉を開けて中に入ってみると……。
倉田さん「この通路は、1階の廊下のちょうど真上になります。通路の右側に空調機が入った小部屋があり、これが1階の居室の真上に位置する形です」
ISSは研究棟や病院、工場など、設備システムの変更が多い建物で採用されているそう。メンテナンスのしやすさを考えた仕組みなんですね。
捨てたゴミが自動的に清掃工場へ送られる!?
屋上から始まったバックヤードツアーもいよいよ終盤。1階まで降りてきました。
清掃ロボットの底面にはブラシがついており、水を出しながらブラシを回転させることで床を磨きます。磨いたあとの水も自分で吸い上げるので、汚れを床に残さない仕組みです。
清掃主任の清水さんも「人が水拭きするよりキレイですね。掃除してもらっているあいだに、こちらも他の拭き掃除とかもできるので助かっています」と、ロボットの働きを労っていました。
鈴木「これはダストシュートです。館内で回収した燃えるゴミは、ここから投入して廃棄されます。都産技研のゴミは、ゴミ収集業者が回収するわけじゃないんです」
ゴミ収集車で回収するのでなければ、ゴミはいったいどこに行くんでしょう……? 「じゃぁゴミの行方を追ってみましょうか」と、鈴木さんは奥にある階段を降りていきました。
鈴木「右側の上のほう、銀色の筒が天井まで伸びていますよね? そこが先ほどのダストシュートにつながっています。投入されたゴミは装置の中で処理されて、左側の配管に送られます。その先には共同溝のゴミ排出管がつながっていて、有明清掃工場まで送られる仕組みです」
捨てられたゴミが、自動的に清掃工場まで届くようになっているとは! 我が家にもこんな仕組みがあれば月水金にゴミを出さなくて済むのに……。
ちなみに新聞や缶ビンといったリサイクル資源は、分別回収したうえで回収業者に渡しているそうです。
地下空間を抜けた先にある「ガラスの箱」
それにしてもこの地下空間、どこからか風が吹いているのを感じます。鈴木さんに聞いてみると「館内の換気のために外気を取り込んでいる場所がある」のだそう。さっそく案内してもらいました。
このときは9月上旬、まだまだ残暑が厳しい時期でしたが、地下の空気はひんやりとしています。早くこれくらいの季節になったらな……と秋に思いを馳せたころ、その光景は現れました。
同行した職員たちが「なんか見覚えがある……」と首をかしげています。それもそのはず、このガラスの空間は、この場所に都産技研が建ったころからずっと正面入口のそばにあるのです……!
鈴木「あのガラスの箱は、館内に外気を取り込む入口なんです。取り込まれた外気は、中にある送風機に吸入され、空調機を通り、館内に供給されています」
取り込まれた外気は、先ほど私たちが通ったコンクリートの空間を吹き抜けます。コンクリートの躯体は年間を通じて温度が一定なので、夏は冷やされ、冬は温められた空気が供給されるのです(これをクール&ヒートトレンチといいます)
鈴木「クール&ヒートトレンチは省エネに有効なんですよ。30℃の外気をそのまま冷やすより、地下を通って20℃になった空気を冷やしたほうが、電力を使わずに済みますからね」
さらに、このガラスの箱は、季節や天候の変化に応じて太陽光の採光・斜光を自動的に調整する「省エネ調光ガラス」でつくられています。
鈴木「夏に、ガラスに太陽光が差すと、白色化して光を遮るため涼しい"木陰"に。逆に、冬は無色透明で太陽光を取り込むため室内が明るく"日向"となるんですよ」
普段見ることがない、都産技研の裏側を知れた「バックヤードツアー」。建物の中に安全や省エネの仕組みが行き届いていることを、改めて感じられる時間になりました。
最後に、鈴木さんに安全への取り組みについて聞きました。
鈴木「中小企業の皆さま、そして研究員の方々が、安心安全に当施設をご利用いただけるように、私たち環境安全管理室は定期メンテナンスや工事修繕を日々行っています。なにげない日常をずっと守り続けられるように、これからも頑張っていければと思います」