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若手研究員の育成に密着!~ロボット技術グループの場合~

都産技研の研究員は、中小企業のお客さまの製品開発や技術開発をサポートするため、多岐にわたる業務を行っています。
 
試験や研究はもちろんのこと、若手職員たちを育てるのも先輩の仕事のひとつ。業務に必要な専門分野の知見は、どのように伝えられているのでしょうか。
 
そこで今回は、ロボット技術グループの若手育成事情を聞きました。


ロボットの強度や耐久性をどうやって確かめる?

ロボット技術グループを訪ねてやってきたのは、都産技研本部のすぐそばに建つテレコムセンタービル。
 
その中に都産技研の「DX推進センター」があり、ロボット開発の支援拠点となっています。

ロボット技術グループ主任研究員の森田裕介さん(左)と、研究員の萩原颯人さん(右)にお話をうかがいます。

お話の前にちょっといいですか。さっき、やけに広いフローリングの部屋があったんですけど、あれは何をするための場所なんですか?

ハーフサイズの体育館かな?という感じの広い空間(幅10m×長さ15m)があります。

森田「傾斜路走行試験装置ですね。ロボットに傾斜面を走らせて、走行性能や安定性を確かめる装置です。実は、あの床は最大12度まで傾くんですよ。ロボットが坂道できちんと止まるか、カーブで横転しないかなどを見るわけですね」

この日は床が7度に傾いていました。7度とはいえ、結構な坂道……!

森田「私たちは、ロボット技術グループの中でも『機構安全』に属しています。中小企業の方々からご依頼を受け、ロボットの安全性を評価するのが仕事です。DX推進センターには10種類ほどの試験設備があり、多様な検証が行えるようになっています」
 
「ロボット」といっても、そのタイプはさまざま。
 
掃除ロボットや運搬ロボットのように移動しながら働くものもあれば、産業用ロボットや受付ロボットのように据え置かれて機能するものも。また、パワーアシストスーツのように、装着するタイプのロボットもあります。
 
そんな個性あふれるロボットたちに、ここではどんな試験をするのでしょう?
 
森田「特に依頼が多いのは強度試験と耐久試験ですね。強度試験では、外装に負荷をかけたり、500gの鉄球をぶつけたりして、その強度をチェックします。耐久試験では、ランニングマシーンのような装置でロボットを延々と走行させて、駆動部の耐久性を評価したりしますね」

こちらが「ベルト型走行耐久性試験機」。走っても走ってもロボットは柵の中です。

萩原「ほかには、電波の影響を確かめるEMC試験というのもありますね。ロボットから出る電波が他の機器に影響を及ぼさないか、また逆に、ロボットが外からの電波の影響を受けないかを確かめます」
 
萩原さん曰く、過去には「大きな電波塔の下だとロボットが動かない」という事例もあったそう。
 
例えば東京タワーは電波塔なので、さまざまな周波数の電波が集まる場所でもあります。なので、どの周波数の影響を受けるのかEMC試験で確かめたのだとか。大変……!
 
それにしても、ロボットって目的も大きさも動きも全部バラバラですよね。それを同じように試験するのって、結構大変なのでは……?

「そうなんですよね……」


森田「お客さまが要望するシチュエーションは毎回異なるので『ここに置いてボタンを押せば計測完了』みたいな、定型の試験は無いんです。確かめたいことを聞いたうえで、『こうすればできそうです』とお客さまと相談しながら、試験方法を決めていくことが多いですね」

 
たとえば「点字ブロックの上を走らせたときのロボットの振動を確かめたい」という依頼があったとします。でも、そんなのやったことない。どうしよう。
 
そこで考えて、「そういえば加速度センサーと遠隔でデータを収集するデータロガーがあったな……」と組み合わせを思いつく。実際に自分たちで試してみる。そこで「いけそう」となれば、お客さまに提案してみる……という流れになるといいます。
 
言わばロボットの試験は“オーダーメード”なんですね。
 
森田「うちの装置で試験ができるのかな……と悩むこともあります。まぁでも、大体のことは『できる』と思って取り組んでいますね(笑)」


自分が身に付けた技術を若手に伝えていきたい

ここで、同じ機構安全の大塚さんと若月さんが合流。ここからは4人にお話をうかがいます。

研究員の若月花梨さん(中央左)と、研究員の大塚菜々さん(中央右)が合流

若月さんは今年採用された新人で、大塚さんは3年目、萩原さんは4年目。リーダーの森田さんは13年目です。
 
森田「ご覧の通り、この数年で一気に世代交代が進んだんですよね。若さは力でもあるんですが、やはりスキルアップは課題になります。そこでまずは、それぞれが持つ専門分野に沿って、試験機の担当を割り振るようにしました」
 
マニピュレーター(ロボットアーム)を専門とする萩原さんは強度試験や耐久試験を、車椅子など介護機器に関する研究をしていた大塚さんは走行性能や安定性の試験を主に担当しています。
 
一方、1年目の若月さんは「まんべんなく仕事を学んでほしい」ということで、先輩のアシストをしているのだとか。

ちなみに若月さんの専門はディスプレイなどの光工学。あまりロボットとは関係がない分野の気もしますけど、半年以上経ってみてどうですか……?
 
若月「率直に言って楽しいです。知らないことしかないので、新しい知識を増やしていけるのが面白くて……。最近は森田さんと研究について討論できるようになって、それも楽しいです」
 
萩原「若月さんからも意見をぶつけるようになったよね」
 
森田「結構厳しいんですよ」
 
若月「いえいえ(笑)。若手の発言もすごく受け入れてくださるので、とてもありがたいです」

大塚「(女性の後輩ができて)うれしいです。自分が新人のときに困ったことは、全部教えてあげたいです」

実は、森田さんがロボット技術グループに異動してきたのは、若月さんが入社したのと同じ2023年4月のこと。
 
もともとロボット事業には関わっていましたが、3年前に本部に異動し、このたび戻ってきた形です。

じゃぁ同期みたいなものじゃないですか? 森田「あーそうですね」 若月「そんなことないです!」

森田「それまでは先輩ばかりの環境だったので、こんなに若い人たちと仕事をするのは新鮮なんですよ。滅多にないことだと思うので、この機会に自分の技術やスキルを伝えていけたらと思っています」
 
チームができた4月には、装置の安全な利用方法についてアセスメント講習を行い、その後も定期的に講習会を開いているそう。また、試験方法を学ぶための「事前練習」も頻繁に行われています。
 
この日も、ロボットの外装の変形を計測するために「ひずみゲージの正しい貼付方法」を学ぶ会が開かれました。

「ひずみゲージ」を接着した金属片を指で前後に動かすと、奥にある計測器を通じて、モニタ上のグラフが反応します。体重計などにも使われている仕組みです。
実際にひずみゲージの接着や配線を行い、測定のノウハウを学びました。

森田「装置の扱いや測定方法などを体系的に学んでもらうのは、今後の都産技研のためでもあります。将来もっと下の世代が入ってきたときに、どんどんスキルを高めてもらわないといけませんから。コミュニケーションが途切れないように、しっかり寄り添っていきたいですね」

取材ご協力、ありがとうございました!


ロボット技術グループをもっと知りたい方へ

ロボット技術グループでは、サービスロボットの社会実装を目指して、さまざまなロボット技術を開発しています。また、ロボットには第三者機関の評価による適合性評価を実施し、リスクアセスメントの精査から実機試験までを行い、安全規格への適合を実現しています。

依頼試験・機器利用にも対応しており、サービスロボット評価試験機を各種取り揃えていますので、ご希望の試験内容に合った試験機をご提案いたします。事前の見学・ご相談も承っております。

お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ:ロボット技術グループ - 都産技研ホームページ (iri-tokyo.jp)
TEL 03-5530-2706


都産技研の新任職員育成制度とは?

新たに採用した職員には、ビジネスマナーや都産技研内でのルールを学ぶ新任研修を実施した後、各配属先でOJT研修に移ります。OJT研修期間中は、先輩職員がチューターとして、新任職員の成長をサポートしていきます。チューターは新任職員の一番身近な目標であり、相談役としてOJT研修終了後も成長を見守り続ける存在です。

また、都産技研の採用ページや公式LINEでは、都産技研の採用情報を随時お知らせします。そして、都産技研の広報メディア『TIRI NEWS』では、採用に関する理事のインタビューも掲載しております。ぜひご覧ください。


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