次世代通信が社会を変える!?「ローカル5G」の世界~潜入!都産技研~
こんにちは、都産技研の広報担当です。いまロボットを走らせているので、ちょっとお待ちくださいね……。
ふー、ようやくコースを最後まで走りきりました。ラジコンみたいで楽しいですね!
えっ、こっちのロボットも動かすんですか? そんなに何度も遊ばせてもらってすみません。
うわ……なんですかこれ。ボタンを押してもすぐ進まないし、ボタンを放してもしばらく止まらないじゃないですか。思った通りに曲がらないし……。
このロボットは無線で動かしているんですが、実は前者のロボットは5Gで、後者のロボットはWi-Fi※(無線LAN)で接続しています。通信のやり方が違うだけで、こんなに操作感に違いがあるんですか……!?
今回の「潜入!都産技研」、テーマは「5G」です。4Gの次は5Gだと聞きますけど、5Gの何がそんなにすごいのか、将来どんなことに使えるのか、広報担当が潜入して迫ります!
今さら聞けない「5Gってなんですか?」
お話を伺ったのは、通信技術グループ主任研究員の渡部雄太さん。都産技研の「DX推進センター」で、5G体験から実証実験まで幅広く支援しています。
すごい基本的な質問なんですけど、「5G」って、そもそもなんなんでしょう。「G」ってなにかの単位ですか? ギガ?
渡部「5GのGは、ジェネレーション(Generation)のGです。5Gとは“第5世代移動通信システム”のこと。4G(第4世代移動通信システム)に比べて、通信速度、遅延、接続数が、それぞれ1桁ずつ進化していると思ってください」
通信速度が1桁違うということは、10倍速いということ。4Gでダウンロードに1分かかっていたものが、5Gだと6秒で終わる計算です。それは速い。
最近スマホでも「5G」の表示が出ることが増えましたよね。ということは、さっきのロボットも携帯電話の電波で動いているんですか?
渡部「いえいえ、この部屋周辺だけで使える“ローカル5G”で接続しています。広範囲で使える携帯キャリアの5Gと違って、限られたエリアで自前の5Gを利用できる仕組みがあるんです」
この部屋だけで使える5G……。なんかWi-Fiみたいですね……。
あ! ということは、さっきは、「この部屋に飛んでいる電波同士」でロボットたちの実験をしていたということですか。
渡部「そうです。さらに、どちらのロボットも操縦だけでなく、搭載したカメラから映像も送っていましたよね」
渡部「複数の機器のデータをやりとりするとき、5Gはうまくデータの交通整理ができるんですが、Wi-Fiはこれが苦手で、遅延も大きくなってしまいます。この実験だと、5Gで20から30ミリ秒、Wi-Fiで50ミリから100ミリ秒の遅延が起きています。」
5Gが活躍できるのは「スマホ以外」のところ
なるほど~。だからさっき、ロボットの操作感に差が出たんですね。
ん? ちょっと待ってください。Wi-Fiのほうはカメラの映像が重荷になっているわけですから……。もしかしてカメラの映像を切ったら、だいたい同じ動きになるのでは……?
渡部「そうなんですよ……。最近はWi-Fiも性能が良くなってきて、周囲の環境次第では5Gと同じくらいの通信速度にもなるんです。なので差を表現するのって、実は結構難しいんですね……」
いやいや、逆にこちらも無理言ってすみません。確かにWi-Fiでも4Gでも5Gでも、スマホでYouTubeを見たりするぶんには、あんまり違いを意識することってないですよね。「電波悪いな」ってことはありますけど。
渡部「そうですよね。ただ、むしろ5Gは、スマホ以外の用途が広がると言われているんです」
渡部さん曰く、自由にアクセスポイントを設置できるWi-Fiと違い、ローカル5Gは免許制なのだそう。そのおかげで、5Gのほうが通信の信頼性が高いのだとか。
渡部「ローカル5Gを使用するときは、必ず『干渉調整』を行います。他のエリアに影響を及ぼさないように調整をしなくてはならないんですね。ですので、アクセスポイント同士が干渉しがちなWi-Fiに比べて、ローカル5Gは通信品質が安定しているんです」
たとえば建設現場で重機を無線で遠隔操作する……といった場面では、電波が途切れ途切れでは困ります。さっきのロボットみたいに、操作しにくかったら大変。通信の信頼性が不可欠なわけですね。
他に、5Gには「セキュリティが強い」「たくさんの端末を接続できる」といった利点もあり、医療など産業用途での活用が期待できるのだとか。
つまり5Gは、社会における「縁の下の力持ち」的なところで真価を発揮するんですね。家でゴロゴロしながらYouTubeを見ているだけでは、わからないわけだ。
渡部「工場内ではWi-Fiを使い、工場の外ではローカル5Gを使って全体をカバーする、といったハイブリッドな事例もありますね。私たちが意識しないところで、5Gの恩恵を受ける例はこれから増えると思います」
5Gは「まだまだ発展途上」
渡部さんは、都産技研で5Gに関わって5年目。しかし「5G自体がまだまだ発展途上の技術」だと話します。
5Gは“高速・大容量”に注目が集まりがちですが、低遅延や多接続といった強みにもまだ伸びしろがあるんだとか。この5年で技術も進化して、先ほど体験したような高信頼性、高速通信を生かした遠隔操作や4Kカメラの映像伝送をはじめ、今後多くの機器が5G網に接続されるはずなんですって。
渡部「初期の頃に『まだ使えないな』と思われた会社さんにも、今なら期待に応えるものになっている可能性もあります。中小企業にも参入チャンスが期待できるのではないでしょうか」
では、渡部さんが思う、今のお仕事の面白いところはどこですか?
渡部「発展途上の技術だからこそ、どんどん進化していくことです。新しい技術や用途が次々に生まれて、『こんなこともできそうだ』と期待が高まっていくところに、面白さを感じています」
この部屋のローカル5G基地局も、2025年2月にアップデートを予定しているそう。
Sub6帯とミリ波帯という、2つの異なる周波数帯の”いいところ取り”をして、大容量通信を実現する「NR-DC」に対応。また、アップロードとダウンロードの通信の割合を変えられる「準同期」という機能も追加されます。
技術の進化に合わせて、支援の環境も進化していかないといけないですもんね。
渡部「特にミリ波帯の通信や端末は、測定方法が特殊なものになりますので、当センターをぜひ活用いただけたら。『そういえば5Gって今どうなってるんだろう?』という方も、お気軽にご相談いただけたら幸いです」
通信技術グループをもっと知りたい方へ
通信技術グループでは、ローカル5Gをはじめとする次世代通信技術の活用と普及を目的とし、情報通信と高周波の2つの技術分野で試験・研究・技術支援を行っています。
情報通信では主にソフトウェア面から、高周波では主にハードウェア面から技術支援を行うことで、ハードウェアからソフトウェアまで一貫した技術支援に取り組んでいます。
また、公設試験研究機関として初めてローカル5G基地局を設置し、次世代通信の接続環境を整備するとともに、ローカル5Gをはじめとする次世代通信機器の測定環境も整備することで、中小企業の高度な研究開発や製品化を支援します。
今回ご紹介したローカル5G基地局の詳細はこちらをご覧ください。
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