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新一万円札の顔・渋沢栄一は「都産技研の父」!? 100年の歴史を振り返る

こんにちは、都産技研の広報担当です。

みなさん、新しいお札はもうお手元に回ってきましたか? ATMでお金をおろすたび、「新札と旧札、果たしてどちらが出るのか……!」と毎回ドキドキしますよね。

今回はそんなお札の「顔」と、私たち都産技研の知られざる関係をご紹介します。



新しい紙幣に盛り込まれたさまざまな「技術」

今回から紙幣の肖像画が変わり、千円札が北里柴三郎、五千円札が津田梅子、一万円札が渋沢栄一になりました。

前回の刷新(2004年)では福沢諭吉だけが続投だったので、一万円札は約40年ぶりに顔が変わったことになります。

出典:国立印刷局「新しい日本銀行券特設サイト|新しい一万円札について」

こうして見ると、見た目がいろいろ変わっています。

もともと、紙幣にはさまざまな偽造防止技術が盛り込まれていますが、今回はさらに緻密になった「高精細すき入れ」や、肖像が3次元に見える「3Dホログラム」が新たに採用されたそう。3Dホログラムでは三次元の渋沢栄一が振り返ります。

そして、見た目の変化といえば「ユニバーサルデザイン」にも注目。旧一万円札と比べると、アラビア数字の額面がひときわ大きくなっています。年齢や国籍を問わず、ひと目で額面を認識できるようにするためです。

出典:国立印刷局「新しい日本銀行券特設サイト|新しい一万円札について」

よく見ると、千円札と一万円札では、「1」の形を変えているんですよね。こんなところにも細かい工夫が光ります。

ユニバーサルデザインは、お札に限らず工業製品とって重要なテーマのひとつ。都産技研でも、城東支所でプロダクトデザインに関する製品開発を支援するなど、この分野に取り組んでおります。

そうそう、都産技研の話になって思い出しましたが、新一万円札に描かれた渋沢栄一は、私たちとも深~いご縁があるんですよ。

生涯で約500社にわたる企業の設立や運営に関わり、「近代日本資本主義の父」と呼ばれた渋沢栄一は、「都産技研の父」でもあるのです……!

工業を発展させるために「中小企業の相談相手」を

都産技研の原点は、1921年に設立された「府立東京商工奨励館」にさかのぼります。

その少し前、第一次世界大戦中の日本では、戦争を背景に輸出産業が伸び、好景気に沸いていました。特に工業の発展はすさまじく、当時の東京には約2,600もの工場があり、その約半数が従業員20名以下の中小企業だったそう。※1

※1 出典:読売新聞、大正6年(1917年)11月8日号

こうなったらさらに国内生産を強化したい、そのためには中小企業の相談先となる機関が必要だ……となり、東京府は1917年に「東京商工奨励館期成会(以下、期成会)」をつくります。この組織の会長となったのが、渋沢栄一でした。

渋沢 栄一 氏(写真:埼玉県深谷市所蔵)

このとき、渋沢栄一は77歳。もともと友人だった当時の東京府知事・井上友一から東京商工奨励館の構想を聞き、その目的に共感したことから会長を引き受けたようです。※2

※2 出典:「斯民」第一四編第七号


100年以上前から変わらない「ミッション」

期成会は、「東京商工奨励館」を建設するために、広く寄付を求めました。ここで渋沢栄一は、その幅広い人脈を発揮。財界人だけでなく一般市民からも多くの寄付が寄せられ、最終的に100万円(現在の11.5億円!)が集まります。それくらい、産業の発展に期待が寄せられていたということでしょう。

こうして、1921年11月に府立東京商工奨励館が完成します。

府立東京商工奨励館 外観

開館式は2日間にわたり盛大に行われましたが、渋沢栄一はアメリカ滞在中だったため残念ながら不在。ただ、当時の新聞※3にはこのような抱負が述べられていました。

「府下商工業者の親切なる相談對手となり、輸出品に対して助言するは勿論、一切の工業試験の依頼に応じ又商工業上の調査を為し、当業者の参考に資する等商工業者の顧問となる積りであるから十分利用して貰いたいものである」

※3 出典:朝日新聞、大正10年(1921年)11月10日号

中小企業に寄り添う相談相手となり、輸出に関するアドバイスはもちろん、試験の依頼や調査にも対応する……。これって、現在の都産技研のミッションとまったく同じですね。

その後、東京商工奨励館は、東京市電気研究所や東京府立染織試験場といった試験研究機関と順次統合し、2006年に現在の都産技研(東京都立産業技術研究センター)の形になりました。

2011年に現在の江東区青海に移転してきました。

100年以上の時が経っても、設立当時のマインドが生きている。これからは財布の中の一万円札を見るたびに、そのことを思い出しそうです。


設立100周年の取り組みについて

2021年に設立100周年を迎えた都産技研は、この節目に「設立100周年記念事業プロジェクト」に取り組みました。いくつかご紹介いたします。

2050年に中小企業を取り巻く社会を想定して、都産技研の取り組みについてまとめた「東京都立産業技術研究センタービジョン2050」を策定しています。

また、「都産技研表彰 - INNOVATION PARTNERSHIP AWARD -」では、都産技研を利用し都内産業を牽引してきた優れた中小企業を表彰。東京都におけるイノベーション創出を発展に導くことを目的として設立し、2021年より毎年表彰を行っています。

都産技研本部には、「都産技研100周年コーナー」も設けられています。お立ち寄りの際はぜひご覧ください。

【参考資料】